
HULIC &New GINZA 8 プロジェクト
日本初の挑戦。
サステナブルな社会を
実現する
耐火木造12階建商業ビル。

HULIC &New GINZA 8
HULIC &New GINZA 8は、日本初の耐火木造12階建の商業ビルとして2021年に竣工。設計施工は竹中工務店、外装デザインを隈研吾建築都市設計事務所が担当し、構造は木造と鉄骨造を組み合わせたハイブリッド構造となっている。
竣工
2021年10月
規模
地上12階、地下1階
用途
商業施設
Member
-
村田 貴広
バリューアッド事業部 /
2019年中途入社 /
工学研究科建築学卒業 -
寺嶋 峻生
バリューアッド事業部 /
2017年新卒入社 /
工学研究科建築学卒業
※所属部署・役職・内容は取材当時のものです。
Part01

チームメンバーの助けなしには、
成功させることが
できなかった。

今回私が担当した「HULIC &New GINZA 8」は、日本初の木造と鉄骨造を組み合わせたハイブリッド構造の12階建商業ビルということもあり、解決が難しい課題がいくつもありました。
まず一つは、コスト面における課題です。やはり一般的なRC造のビルに比べて、木造ビルの建築コストは高くなってしまうという問題がありました。そもそも、耐火木造12階建ての商業ビルの建設は当社初の試みであったため、指標となる価格が存在していなかったのです。そのため、コスト削減においてはあらゆるステークホルダーの方々と意見を出し合い、協議する日々を送りました。
そんな周囲のご協力に助けられ、木造の先導的な取り組みや多摩産材の使用が評価され、国土交通省と東京都の補助事業に認定され、コストアップの緩和を図ることができました。まさに、ヒューリックの力だけでは実現できないプロジェクトだったと思います。
私がこのプロジェクトに際して一番意識したことは、「このチームを自分がまとめていくんだ」というリーダーシップ。耐火木造建築という当社初の試みであるプロジェクトということもあり、一般的な開発プロジェクトに比べて懸念事項・課題がとにかく多い。それらを解決するためには、チーム一丸となってプロジェクトを推進する必要がありました。
一人ではできなくても、何人も集まって知恵を集約すればできることはたくさんある。そんなチームで取り組むことの大切さを教えてもらったプロジェクトでしたね。

しかしながら、ただコストを下げて建設をすれば良いわけではありません。今回の木造ビルの開発にあたり、やはり「木」をなるべく全面に出した建築にするということも大事にしていました。設計過程で具体的に論点に上がったのは、「天井をどうするか」という点です。
本建物の天井面には、CLTと呼ばれる木板を積層させたもの採用しています。通常、天井には照明や空調機といった様々な設備やそれに伴う配管配線、内装を不燃化するための仕上げ材等を天井面に設置することが多いのですが、そうすると「木」が隠れてしまい、木造ならではの魅力が薄れてしまいます。そこで、スプリンクラーと機械排煙の併用による内装制限の緩和により木の現しを実現しました。
また、CLTの版間に「インサートレール」と呼ばれる金物を設置しました。このレールを用い、設備機器やテナント工事による天井吊り下げに対応し、また、レール内部に配線の機構を持たせることで、木の現しと建物の更新性に配慮した計画としました。
こういった細かい一つ一つの積み重ねにより、木造ビルならではの魅力を最大化させていくことができたと思います。
自分だけではなく、長い年月を一緒に走ってきたメンバーと1つのチームとして結束してプロジェクトを進めていったからこそ、建物が竣工した時の感動も非常に大きかったと実感しています。
今後、木造ビルという新しい取り組みは、ヒューリックだけではなく不動産業界全体にも波及していくはず。ヒューリックの環境分野への取り組みの転換点ともなった、今回のプロジェクトに関われたことは大変光栄に思います。
Part02

サステナブルな不動産開発は、
企業ブランディングにも
貢献できる。

私は「HULIC &New GINZA 8」のプロジェクト推進を担当しました。
このプロジェクトは、環境面に配慮した日本初の耐火木造12階建商業ビルの開発ということでスタートしましたが、やはり着目すべきは「森の循環」というモデルを採用している点だと思います。「森の循環」とは、木材活用推進に取り組むのと同時に建物での使用量と同量の植樹を行い、木材資源を循環化させていくというモデルのことです。今回のプロジェクトでも、使用した木材の量だけ福島県白河市の森林に植樹を行い森林循環を活性化させることで、ネットCO2排出量を抑えることに貢献することができました。
そういった環境面への取り組みは、開発者である我々ヒューリックだけではなく、木造ビルにご入居されるテナントさまにもメリットがあります。というのも、一般的なビルにご入居されるよりも、HULIC &New GINZA 8のようなサステナビリティを意識したビルに入居されることで、テナントさまの企業の認知度向上や、環境に対する企業姿勢を示すことにもつながるためです。
立地や広さといった機能的側面だけではなく、企業ブランドという付加価値を付与することができる。まさに、商業ビルの新しい可能性に挑戦したプロジェクトであったと思います。

このプロジェクトでは、私も知見を高めるきっかけになりました。ただプロジェクトマネジメントを行うだけではなく、コスト管理や法律の制約といった多角的な視点からプロジェクトに向き合うこと、たとえ前例のない挑戦であっても、その都度考えて対応していく柔軟さを得ることができた仕事だったと思います。
また、環境分野への先進的な取り組みから社会的な関心も高く、メディアや諸官庁といった幅広い方面から問い合わせをいただくことも多々ありました。やはりこういった注目度の高い商業ビルに携われるのは、働くやりがいにもつながりますね。本物件に限らず、メディアで自分の仕事が報道されたり、友人が実際にその施設を利用していることを知ると、自分の仕事をとても誇りに思えます。
このプロジェクトを通し、建物の竣工はあくまでもスタートであり、地域の方や来館者の方々に施設を気に入っていただくことが開発物件のゴールだと考えるようになりました。
これからも、社会的にどうやって貢献できるか、テナントさまや来館者の方達にどのような価値を提供できるかを考え、不動産開発を行っていきたいと思います。